馬主をやっててツラいこと

いろんな方から「馬主やってて楽しそうですよね」って言われることがあるのですが、まぁ楽しいです。

そもそも好きでやってますし、好きじゃないと続かないですし。

普段生活してると出会わない方々とも交流できるのは「馬主をやっててよかったな」って感じることではあります。

ただね、楽しいことだけじゃないんです。

お金はめっちゃ減るし、生き物相手なので全てが考えていた通りになるわけではないし。

社会的な理解者はまぁまぁ少ない分野だし。

一番辛いのはアイツら可愛いんです。

よく論争にもなりますが、競走馬の正しい姿とはなんなのでしょうか?

レースをし、成績を残し、牡馬なら種牡馬に、牝馬なら繁殖に。

それはほんのひと握りのウマに許された未来で、98%ほどのウマはそれ以外の世界に消えていきます。

詳しい話は平林さんの本を読んでください。

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ボクがその現実に突き当たったのは1頭目のトーセンイザベルでした。

ボクのところに来るまでに3人のオーナーを経由し、鼻出血を抱えた状態でした。

当たり前ですが、初めての所有馬。可愛くないわけがありません。

ボクの携帯の壁紙はつい最近まで、彼女が休養牧場で手入れされてる時の写真だったくらい思い入れがある1頭です。

しかしながら成績はまぁ、ご察しの通り。

年末に2度目の鼻出血の報告を川崎の田島先生から受けた時は愕然としました。

その時にボクに残された選択肢は3つでした。

①繁殖として持つか、②他人に売却するか、③屠畜するか。

今ならば④の他場への転厩も選択肢に入りますし、⓪のそもそも買わないって選択もあります。

ただ当時のボクは①〜③しか手札がない状態でした。

①は田島先生から強く止められました。そもそも繁殖事業に手を出すな、と。

それについては今でも感謝してます。今考えても、ボクにはできない選択肢です。

となると、②か③しかありません。

本当に悩みました。理由はどんな考えかたをしても未来が③になるからです。

結果、その時選んだのは②でした。他人に運命を委ねる。

あの時のボクにはベストな選択肢だったと思います。

ただ当時はその選択が正しかったのか、ずっと引きずってました。

それからは1つ自分の中で決めたことがあります。

それは「最後まで自分の責とする」こと。

他人に売ることもあります、が、それはどうなっても購入したオーナーは悪くない。

そこに対して憤るなら、自分で最後まで面倒を見ること。

ボクはサラブレッドを「経済動物である」とすることに異は唱えません。

事実、経済動物だと捉えています。

しかしながら「経済動物ではない」とすることに対しても理解を示します。

じゃあ「愛玩動物」かと言われれば、結構難しい。一緒に暮らしてないし。

ただ1つ言えるのは「最後まで責任とれよ」ってことです。

別に他人に売るのも、どうするのも勝手なので構いません。

その後のことについて文句言うなよ、ってことです。

文句言えるのは金出した人間だけです。言いたかったら自分で買いましょう。

あ、馬券は別です。これはジョッキーとか関係者とかdisの対象です。

でも「○ね」とか直接的な表現はやめてあげてください。グッときます。

サラブレッドがそのような議論の対象になるのは、関係者の多さなのではないかと仮説立てています。

生産牧場・育成さん・厩舎スタッフ・調教師・ジョッキー・オーナー・ファン。

牛やニワトリやヤギでは見られない光景ですよね。

かといって、イヌやネコのようにずっと一緒にいたり、見慣れている動物でもない。

そこが議論を心情的に難しくしている理由の1つではないかと。法的には簡単なんですけどね。

また、スポットライトを浴びる人たちは一握りの選ばれしものたちで、それ以外の日陰については見られることも少なく、神格化されやすいことも要因の1つではないかと思料します。

そこに憧れ、目指す糧とするのは良いと思いますが、日陰の部分にも目を当て、理解をすることが、本来の畜産振興の意図する部分なのではないかと考えます。

ちょっと話はそれましたが、走らないウマにもコストはかかります。

それを負担するのはオーナーである馬主と呼ばれる人たちです。そしてその期間のお世話をするのは育成牧場や休養牧場などと呼ばれる人たちで、決して陽が当たるポジションではありません。

だからといって蔑ろにしていい存在なわけはなく、ボク個人としては同じくらいリスペクトを持って接しています。

走っていない期間はコスト算出しづらく、馬主にとっても負担であることは間違いないです。

だからといって目を伏せていい類のものではなく、しっかりとそこに対しての対応も考えなくてはいけません。

長くなりましたが、明日5/11に5ヶ月ぶりのレースを迎えるウマがいます。

この子は前走後2度、屠畜されるかもしれない状況にありました。

1度目については、もう不問にします。終わったことですので。

ただし2度目のオーナー、事情はわかりますが、育成さんへの預託料の支払いはしてあげてください。

家族経営の零細牧場いじめて楽しいですか?

ボクには競馬場への遠征や、ご親族の習い事の費用を優先される神経がわかりかねます。

話せばわかるかと思いましたが、どうやら違うようですので。

いつの世も、ウマは悪くないです。

悪いのはそこに巣食う我々人間です。

だからこそ、せめてウマに関することくらいは誠実に向き合いませんか?